3月は「春告魚(はるつげうお)」とも呼ばれているメバルが本格的にシーズンインし、カサゴも引き続き好調をキープする、穴釣りファンにとって絶好のタイミングです。水温がじわじわと上がり始めるこの時期、テトラ帯の根魚たちはエサへの反応が冬場よりも格段に良くなります。
この記事では、釣り初心者の方でもすぐに実践できるよう、3月のテトラ帯穴釣りに必要なタックル・仕掛け・エサ・釣り方のコツ、そして安全対策までまるごと解説していきます。
3月がテトラ穴釣りに最適な理由
3月は暦の上では春ですが、海の中はまだ冬の名残が色濃く残っています。海水温は地域にもよりますが、おおむね12〜15℃あたりで推移し、多くの魚種にとってはまだ低活性の時期です。ところが、根魚であるカサゴやメバルにとっては話が違います。カサゴは通年狙える魚ですが、10月から6月にかけてが特に好調で、3月はシーズンのど真ん中にあたります。メバルは「春告魚」の異名のとおり、まさに春の訪れとともに活性が上がり始める魚です。
また、3月のテトラ帯にはもう一つの利点があります。アジやイワシなどの回遊魚を狙うサビキ釣り師やルアーマンがまだ少なく、テトラ帯が比較的空いているのです。人的プレッシャーが低い分、魚もスレておらず、仕掛けを落とせば素直に食ってくるケースが多くなります。さらに、穴釣りは風に強い釣りでもあります。3月特有の強い春風が吹いても、テトラの隙間に仕掛けを落とし込む穴釣りなら問題なく竿を出せます。ジギングやエギングなどが風で成立しない日でも、穴釣りなら釣りを楽しめるというのは大きなアドバンテージです。
ターゲットはカサゴとメバル
カサゴ(ガシラ)
カサゴは穴釣りの代表的なターゲットです。大きな頭にゴツゴツした体、鮮やかな赤褐色の体色が特徴で、テトラの隙間や岩の影にじっと身を潜めてエサが落ちてくるのを待ち構えています。成長は遅く、20cmに達するまで数年を要しますが、その分、白身の味は上品で非常に美味です。3月は産卵を終えた個体が体力回復のために盛んにエサを食べる時期でもあり、良型が期待できます。
夜行性の傾向が強い魚ですが、テトラの奥深くに潜んでいる個体は日中でも活発にエサを捕食します。目の前にエサが落ちてくれば時間帯を問わず反応してくれるため、穴釣りにおいては「日中でも釣れる」ありがたいターゲットです。
メバル
メバルは大きな目が特徴的な根魚で、カサゴと並ぶ穴釣りの人気ターゲットです。カサゴよりもやや中層を意識する傾向があり、テトラの穴の中でも底べったりではなく、少し浮いた位置で待機していることが多いのが特徴です。3月は水温の上昇とともに活性がぐんと高まり、夕マズメから夜にかけては特に活発にエサを追います。
メバルもカサゴと同じく食味が素晴らしい魚で、煮付けにすると絶品です。ただし、メバルはカサゴ以上に引きが鋭く、掛かった瞬間にテトラの奥に突っ込もうとするので、素早い取り込みが求められます。
穴釣りに必要なタックル
穴釣りの魅力の一つは、タックルがシンプルでコストを抑えられることです。高価な道具は一切必要ありません。
ロッド(竿)
テトラの上に乗って足元の穴を攻めるため、長い竿はかえって邪魔になります。60cm〜150cm程度の短竿が最適です。穴釣り専用ロッドも各メーカーから販売されており、ダイワの「穴釣り専科」やジャッカルの「EGG ARM」などが定番として人気があります。専用ロッドでなくても、短めのバスロッドや万能竿でも十分に代用できます。
竿の調子(曲がり方)は「先調子」がおすすめです。穂先が敏感に曲がることで小さなアタリも察知できますし、バット(手元側)に適度な硬さがあれば、掛かった魚を一気に穴から引きずり出すパワーも確保できます。
リール
穴釣りには小型のベイトリール(両軸リール)が最も適しています。スピニングリールのように糸ヨレが発生しにくく、クラッチを切るだけで仕掛けを真下に落とし込めるため、テトラの狭い穴への投入がスムーズに行えます。遠投する必要は一切ないので、ワカサギ用やヘチ釣り用の小型リールでも問題ありません。安いものなら1,000〜2,000円程度で手に入ります。
もちろんスピニングリールでも穴釣りは可能です。手持ちのリールがスピニングしかないという方は、1000〜2500番クラスのものを使えば大丈夫です。
ライン(釣り糸)
穴釣りではラインがテトラやコンクリートの角に擦れることが避けられません。そのため、根ズレに弱いPEラインは不向きです。フロロカーボンラインの3号前後が最もおすすめで、根ズレへの耐性と適度な感度を兼ね備えています。コストを重視するなら、ナイロンラインの3号でも十分に使えます。いずれにしても30m程度巻いておけば穴釣りには十分です。
仕掛けはブラクリでシンプルに
穴釣りの仕掛けは驚くほどシンプルです。ラインの先に「ブラクリ」と呼ばれるオモリ付きの針を結ぶだけ。ウキもサルカンもガン玉も不要で、釣りを始めたばかりの方でも迷うことはありません。
ブラクリとは
ブラクリは、丸みを帯びたオモリの下に短いハリスと針がセットされた穴釣り専用の仕掛けです。オモリの形状が丸いためテトラの隙間をコロコロと転がりながら奥深くまで入り込んでいき、なおかつ引っ掛かりにくい設計になっています。赤や蛍光色のビーズが付いているものが多く、視覚的なアピール効果もあります。
重さは3号〜5号(約10〜18g)あたりが3月のテトラ穴釣りには汎用性が高く、波が穏やかな日は軽め、潮の流れが強い場所やテトラが大きい場所では重めを選ぶと良いでしょう。
おすすめのブラクリ
市販のブラクリは各メーカーから豊富に出ています。ささめ針の「ブラクリ」シリーズ、がまかつの「うきまろブラクリ」、ジャッカルの「エッグショット」などが代表的です。根掛かりによるロストを考慮して、同じ号数を5〜10個ほどまとめて用意しておくと安心です。100円ショップのダイソーでもブラクリが売られていることがあり、初心者がお試しで使う分にはコスパ抜群です。
ブラクリの自作
慣れてきたら自作に挑戦するのも楽しいものです。セイゴ針やチヌ針のチモト(結び目部分)から5cmほどのところに割りビシオモリを噛ませるだけで、簡易ブラクリが完成します。現場で仕掛けをロストした際の応急処置としても覚えておくと役立ちます。
エサの選び方──虫エサから切り身まで
根魚は雑食性が強く、強い臭いを発するものであればかなり幅広いエサに反応します。以下に、穴釣りで定番のエサとそれぞれの特徴を紹介します。
青イソメ(アオイソメ)
釣具店で最も手に入りやすい万能エサです。「たらし」(針から垂らす部分)を2〜3cm取ると、水中でうねうねと動いてアピールしてくれます。生きエサなので食いが非常に良く、3月のやや低めの水温でもしっかりと魚を引き寄せてくれます。500円前後で1パック購入すれば、半日〜1日分は十分に持ちます。
サバの切り身
穴釣りの隠れた最強エサとして定評があります。スーパーで生サバを買って1cm幅×3cm程度の短冊に切り、塩をまぶしてキッチンペーパーで水気を取っておくと身が締まって針持ちが格段に良くなります。強烈な臭いが広範囲にアピールし、特にカサゴへの効果は抜群です。余った分は冷凍保存できるため経済的でもあります。
オキアミ
サビキ釣りなどでもおなじみのエサで、こちらも釣具店で簡単に手に入ります。ボイルタイプのオキアミは身が硬く、エサ取りにも比較的強いためおすすめです。冷凍しておけば複数回の釣行に使い回せます。
その他のエサ
イカの切り身は白色が視覚的にアピールし、身持ちも良好です。磯ガニは現地で採取できる天然エサで、ハタ系の大型魚にも効果があります。魚肉ソーセージやバナメイエビなど、コンビニやスーパーで手に入る食材でも代用可能なので、急な釣行でも困ることはありません。
ポイントの選び方──「釣れる穴」の見分け方
テトラ帯であればどこでも穴釣りはできますが、「よく釣れる穴」と「魚がいない穴」には明確な違いがあります。
穴の深さを見る
穴釣りで最も重要なのが穴の深さです。テトラの隙間に仕掛けを落としてみて、スーッと深く沈んでいく穴は魚が潜んでいる可能性が高い一級ポイントです。反対に、すぐに底に当たってしまう浅い穴は、外敵から身を隠しにくいため根魚が居着いていないケースが多いです。とにかく「深い穴」を優先的に攻めることが釣果アップの近道です。
テトラの位置
テトラ帯の中でも、沖側(外洋側)に位置するテトラは潮通しが良く、エサとなる小魚やエビが集まりやすいため、根魚のストック量も多い傾向にあります。ただし沖側は波をかぶりやすく危険度も高いので、無理は禁物です。安全に立てる範囲で、できるだけ潮通しの良い場所を狙いましょう。
水面下の海藻や貝の付着
テトラの水面下を覗き込んだとき、海藻や貝殻がびっしりと付着しているテトラ帯は生態系が豊かな証拠です。こうした場所にはエビやカニなどの甲殻類が多く棲みつき、それを餌にする根魚も自然と集まってきます。
釣り方の基本とコツ
穴釣りの釣り方はとてもシンプルですが、ちょっとしたコツを意識するだけで釣果が大きく変わります。
基本の手順
まずテトラの隙間を見つけたら、ブラクリにエサを付けてそっと穴に投入します。クラッチを切り(スピニングならベールを起こし)、仕掛けの自重で落とし込んでいきます。途中でテトラの段差に引っ掛かることがありますが、軽くロッドを上下させたり、角度を変えたりして、できるだけ底まで届けることを意識しましょう。底に着いたらラインを張り、竿先でアタリを待ちます。
「素早く底まで落とす」が鉄則
根魚はテトラの奥底、棲み家の一番深い場所で身を潜めています。中層まで浮いてエサを食うのは小型の個体であることが多く、良型を狙うなら確実にボトムまでエサを届けることが重要です。いわゆる「カサゴマンション」(カサゴが密集して棲んでいる穴)に当たると、大きい個体から順番に釣れてくるという現象が起きますが、これもエサがしっかりとボトムに届いている場合に限った話です。
誘い方
底まで仕掛けが到達したら、10〜15cmほど軽く底を切って(持ち上げて)待ちます。重いオモリはほとんど動かず、その下のエサだけがゆらゆらと自然に揺れてアピールしてくれます。30秒〜1分ほど待ってアタリがなければ、いったん仕掛けを30cmほど持ち上げてからゆっくりフォール(落とし込み)させます。根魚は頭の上方に目が付いており、上から落ちてくるものに強く反応する習性があるため、このリフト&フォールの動きが非常に効果的です。
アタリと合わせ
カサゴのアタリは「コツン!」と明確に手元に伝わってくることが多く、メバルの場合は「グッ」と引き込むような感触になります。いずれの場合も、アタリを感じたら即座に竿を立てて合わせましょう。穴釣りでは基本的に「向こう合わせ」(魚が勝手に針掛かりする)でも問題ありませんが、もたもたしていると魚がエサをくわえたままテトラの奥に潜り込み、エラ周辺のトゲを引っ掛けて出てこなくなります。
取り込みは一気に抜き上げ
魚が掛かったら引きを楽しむ余裕はありません。短竿のパワーを活かして一気に抜き上げてください。根魚の口は硬いので多少強引に引いてもバレることはそう多くありません。テトラの穴から頭が出た瞬間が勝負で、ここでもたつくと再び奥に潜られてしまいます。
ラン&ガンで穴を攻略
穴釣りは「足で稼ぐ釣り」です。一つの穴で粘りすぎず、アタリがなければ1〜2分で次の穴に移動しましょう。魚がいる穴であれば、仕掛けを落とした直後〜数十秒以内にアタリが出ることがほとんどです。反応のない穴に長時間費やすよりも、テトラ帯を端から端まで歩きながら数多くの穴を探った方が、トータルの釣果は伸びます。
根掛かり対策と回収テクニック
穴釣りにおいて根掛かりは避けて通れない宿命です。しかし、いくつかのポイントを押さえておくことで根掛かりの頻度を大幅に減らすことができます。
まず最も大切なのは、ラインを常に張った状態に保つことです。糸がたるむと、波や潮の流れによって仕掛けがテトラの隙間に挟まったり、針が岩肌に引っ掛かったりする原因になります。仕掛けを操作するときは、穂先からブラクリまでのラインが一直線になるよう意識しましょう。
仕掛けを落とし込む際には、フリーフォール(糸を出しっぱなしにして自然に落とす)ではなく、サミング(親指でスプールを軽く押さえて糸の出を調整する)しながらゆっくり落とすのが効果的です。途中でオモリが段差に当たった感触があれば、竿先の角度を少し変えて別のルートを通してやると、引っ掛かりを回避しながらボトムまで到達させることができます。
それでも根掛かりしてしまった場合は、まず慌てて引っ張らないこと。竿先を5cmほど下げて、オモリの自重を利用して下方向に外すイメージでトンッと軽く揺すってみてください。ガッチリ噛み込んでいなければ、これだけで外れることが多いです。それでもダメなら、ラインの角度を左右に変えて何度か軽く引いてみましょう。最終手段として、ラインを手に巻いて真っ直ぐ引っ張り切る場合は、竿に負荷をかけないよう注意してください。
3月の時間帯別攻略法
朝マズメ(日の出前後)
3月の日の出はおおむね6時前後です。薄暗い時間帯から明るくなるにつれて、夜間活発に動き回っていたメバルがテトラの穴に戻り始めます。この「帰宅ラッシュ」のタイミングは穴の入り口付近でもアタリが出やすく、メバルを狙うなら逃せない時間帯です。
日中(9時〜15時頃)
日中はカサゴの独壇場です。テトラの奥深くに潜んでいるカサゴは昼間でもエサが目の前に来れば躊躇なく食いつきます。日中は穴の深さがポイントで、浅い穴よりも光が届きにくい深い穴を重点的に攻めましょう。メバルは日中の穴釣りでは活性がやや落ちますが、テトラの影になっている暗い穴では釣れることもあります。
夕マズメ〜夜(16時〜)
夕マズメから夜にかけては、カサゴ・メバルともに活性が最も高くなるゴールデンタイムです。特にメバルは暗くなると大胆にエサを追うようになり、アタリの数が日中とは比較にならないほど増えます。常夜灯のあるテトラ帯では、灯りに集まる小魚やプランクトンを狙ってメバルが寄ってくるため、常夜灯の明暗の境目付近にある穴は特に狙い目です。ただし夜間のテトラ帯は危険度が格段に増すので、安全面には細心の注意を払ってください。
安全対策とマナー
ライフジャケットは必ず着用する
テトラポッドの上は想像以上に危険な場所です。表面は滑りやすく、一度バランスを崩すと立て直しが困難です。テトラの隙間に落下した場合、自力で脱出するのは極めて難しく、重大な事故につながるケースが後を絶ちません。穴釣りを楽しむ際には、必ずライフジャケット(自動膨張式または固形式)を着用してください。
滑りにくい靴を選ぶ
テトラの表面はコンクリートのように見えてツルツルしています。乾いていればスニーカーでもある程度グリップしますが、少しでも濡れると一気に滑ります。フェルトソールの磯靴が最も安全で、テトラへの食いつきが段違いです。スパイク付きのものはかえってテトラの表面で滑ることがあるため、スパイクなしのフェルトソールをおすすめします。
立ち入り禁止区域には入らない
テトラ帯の中には、安全上の理由から立ち入りが禁止されている場所があります。看板やロープで規制されている区域には絶対に入らないようにしましょう。釣り禁止区域での釣りは、その場所だけでなく周辺の釣り場全体が規制されるきっかけになりかねません。
小さな魚はリリースする
根魚は成長が非常に遅く、行動範囲も狭いため、小さな個体まで持ち帰ってしまうとその穴の魚が枯渇してしまいます。カサゴ・メバルとも15cm以下はリリースすることを心がけましょう。お腹が膨らんでいる抱卵個体も、サイズに関わらず逃がしてあげると、翌年以降の釣果につながります。
ゴミは必ず持ち帰る
仕掛けのパッケージ、切れた糸、エサの残りなどは必ず持ち帰りましょう。近年、マナー違反が原因でテトラ帯や堤防が釣り禁止になるケースが増えています。釣り場を守ることは、自分自身の釣りの未来を守ることでもあります。
釣った魚の持ち帰りとおすすめ料理
テトラ帯で釣れたカサゴやメバルは、その場で締めてクーラーボックスに入れて鮮度を保ちましょう。氷に直接触れると身が傷むので、ビニール袋やジップロックに入れてからクーラーに収めるのがベストです。
カサゴのおすすめ料理は「唐揚げ」です。ヒレを広げたまま丸ごと二度揚げすると、骨までバリバリ食べられるお酒の最高のお供になります。メバルはやはり「煮付け」が王道で、甘辛い煮汁にふっくらとした白身が絡んだ味わいは格別です。どちらの魚も刺身にしても上品な甘みがあり、20cm以上の良型が釣れたらぜひお造りも試してみてください。
まとめ
3月のテトラ帯穴釣りは、タックルがシンプル、釣り方も簡単、それでいて食べて美味しいカサゴ・メバルが狙えるという、初心者からベテランまで楽しめる釣りです。
短い竿に小型リール、フロロカーボンライン3号前後にブラクリを結ぶだけのシンプルなタックルで始められること。エサは青イソメやサバの切り身など手に入りやすいもので十分なこと。深い穴を優先的に攻め、素早くボトムまでエサを届けること。アタリがなければ粘らずに次の穴へとテンポよく移動すること。そして何より、ライフジャケットの着用と滑りにくい靴選びを徹底して安全第一で楽しむことを心がけましょう。
※釣行の際は、各釣り場のルール・規制を必ず事前にご確認ください。テトラポッドは足場が不安定で危険を伴います。安全装備を万全にしたうえで、無理のない釣行を心がけましょう。

